札幌で発達の診断を考えるときに知っておきたいこと
この記事は「札幌で中学生の発達が気になる保護者のための相談ガイド」の続きです。
前の記事では、診断の有無に関わらず利用できる相談窓口についてまとめました。
今回は、その次のステップとして「診断」をどのように考えるかを整理していきます。
中学生になってから、
「この困りごとは発達特性なのかな…?」 「病院を受診したほうがいいのか迷っている」
そんな気持ちを抱えながら過ごしている保護者の方は、本当にたくさんいらっしゃいます。
小学校の頃は気にならなかった行動が、中学生になった途端に目立ち始めたり、
友人関係や学習面で「何か違うかも」と感じたりすると、心がざわつくのは自然なことです。
また、発達や思春期の話題はとてもデリケートで、家族や学校にも相談しづらく、
「気にしすぎなのかな…」「反抗期かもしれないし…」
と、ひとりで抱え込んでしまう方も少なくありません。
そんな中で「診断」という言葉を聞くと、どうしても不安や緊張を感じてしまいますよね。
しかし実際の診断は、
お子さんの困りごとの理由を丁寧に整理し、どんなサポートがあると楽になるのかを知るための機会と考えていただけると、少しイメージがやわらぐかもしれません。
診断を受けることが正解というわけでもなく、受けない選択が間違いというわけでもありません。
大切なのは、「どうしたらこの子が少しでも生きやすくなるだろう」という保護者の想いです。
この記事では、そんな迷いや不安を抱える保護者の方へ、
診断の流れや医療機関の探し方を、できるだけやさしくお伝えしていきます。
「診断を受ける/診断を受けない」はどちらが正しいというものではなく、
ご家庭の状況や、お子さんの気持ち、保護者の方のタイミングを大切にしながら考えていくものです。
まずは「知っておくと安心できる情報」から一緒に整理していきましょう。
また、相談先が知りたいという方は、ぜひこちらの記事も目を通してみてください。
この記事の要点
- 診断は義務ではなく、お子さんと家庭を楽にするための選択肢のひとつ
- 「困りごとが長く続く」「学校生活に支障が出ている」「本人が頑張っているのに報われない」ときは受診を検討する目安になる
- 札幌で診断を受ける際の医療機関の探し方、診断の流れ・期間・費用のイメージが整理できる
- 「診断を受けない」という選択肢もある。診断の有無に関わらず使える相談窓口についても解説あり
診断を検討するタイミングとは?

診断は「義務」ではありません。
お子さんの生きづらさを整理し、お子さんや家庭がラクに生活できるようにするための選択肢のひとつ です。
ここでは、診断を検討するときの目安となるポイントをお伝えします。
① 困りごとが「長期間」続いているとき
次のような困りごとが、数か月〜数年続いている場合は、発達特性が影響している可能性があります。
- 努力しているのに成績が上がらない
- 忘れ物・提出物の抜けが慢性化している
- 授業についていけず、本人がつらそう
- 苦手に対する自己否定が強くなっている
- 声かけや工夫をしても変化が見られない
思春期の一時的な変化であれば緩やかに改善することが多いですが、
“根っこの苦手さが変わらない” と感じるときは、受診を検討してもよい時期です。
② 学校生活に支障が出ているとき
学校での困りごとは、本人にとって大きな負担になります。
- 不登校・保健室登校が続いている
- 友だちトラブルが繰り返される
- 朝になると腹痛や不安が強い
- 教室の刺激が苦しく、パンクしやすい
- 時間割・持ち物管理が極端に難しい
学校生活でのしんどさが積み重なると、
二次的な不安や落ち込みにつながりやすいため、早めの受診が安心につながります。
③ 本人が「頑張ってるのにできない」と感じているとき
診断の大きな目的は、本人の苦しさの理由を言葉にしてあげることです。
- 自分を責める
- 失敗を必要以上に怖がる
- 「どうせできない」と挑戦しなくなる
- 泣いてしまうことが増える
- 過敏性や情緒不安定が目立つ
こうした状態が続くとき、診断が“安心材料”になる場合があります。
④ 家庭だけでは支えきれないと感じてきたとき
これは保護者のせいではありません。
中学生の時期は「思春期+学校環境+特性」が重なり、家庭の工夫だけではどうしても限界が見えやすい時期です。
- 声かけが届かない
- 勉強サポートが毎日大きな負担
- 生活リズムが整わない
- 親子関係が疲れてしまう
専門家に一度みてもらうことで、家庭の負担がぐっと軽くなるケースはたくさんあります。
⑤ 相談機関で「医療機関を紹介された」とき
相談先の機関から「一度、病院でみてもらってもいいかもしれませんね」と言われた場合も、受診を検討するひとつのサインです。
「お子さんの困りごとの理由を、もう少し詳しく整理してもらうと安心ですよ」という意味合いに近いものです。
医療機関では、聞き取りや検査を通して
「どこに苦手の根っこがあるのか」「何が負担になっているのか」 をより細かく見てもらえる ため、
結果として学校や家庭でのサポートが整いやすくなります。
「診断を受けない」という選択肢も大切
診断を受けるかどうかに「正解」はありません。
迷った結果、次のような理由で「今は受けない」と判断しても大丈夫です。
- 困りごとが軽度で、生活に大きな支障がない
- 本人が診断を受けることに強く不安を感じている
- 家庭や学校のサポートで安定している
- 今は環境を整えることを優先したい
診断は急ぐものではないので、その家庭のペース が何よりも大切です。
診断の有無に関わらず「支援は受けられる」
札幌市内には、診断がなくても相談できる場所は多くあります。
- 教育相談センター・ちえりあ教育相談
- 札幌市自閉症・発達障がい支援センターおがる
- スクールカウンセラー
- 民間カウンセリング
つまり、診断を受けなければ何も始められない …わけではありません。
診断を受けるメリット
① 周囲の大人が“同じ理解”を持てるようになる
特性が分かると、家族・先生・支援者の間で 「なぜ困るのか」という理解が揃いやすくなります。
その結果、接し方のズレが減り、統一したサポートがしやすくなります。
たとえば、「怠けている」「やる気がない」と思われていた行動が、
じつは 「脳の特性から来る苦手さ」 とわかるだけで、周囲の関わり方が大きく変わります。
② お子さん自身の自己否定が減る
中学生の多くは、できない理由を「自分がダメだから」と自分に向けてしまいます。
診断は、「できない理由は、あなたの『性格』ではなく『特性』だったんだよ」 と伝える手助けになります。
③ 学校で「お子さんに合った対応」が受けやすくなる
診断書があることで、 「この子にはこういう特性があります」という共通理解が学校と共有しやすくなるため、先生が対応を考えやすくなる、というイメージに近いです。
提出物の量や期限の調整
わかりやすい指示の出し方
集中しやすい席の位置の工夫
通級指導や支援学級との連携相談
これは「特別扱い」ではなく、お子さんが学校生活を少しラクに過ごすための調整と考えていただければ安心だと思います。
診断前に家庭でできる準備
困りごとを「事実ベース」でメモしておく
医師に伝えるときに役立つのは、「どんな行動が、いつ・どれくらい起きているか」 という客観的な情報です。
なぜかというと、診断では
特性によるものなのか、環境の変化や心の負担によるものなのか
を見分ける必要があり、事実のほうが判断材料になるからです。
たとえば、次のような短いメモでも十分助けになります。
- 忘れ物が週に何回あるか
- 課題に取りかかれない様子
- トラブルが起きた場面の概要
- 朝の不安や身体症状
- 行動や発言のパターン
こうした「できる範囲の観察メモ」があると、医師はお子さんの困りごとの背景をより正確に理解し、必要なサポートを見立てやすくなります。
学校からの情報があれば一緒に持参
- 通知表
- 担任からのコメント
- 支援カード
- 提出物が出せなかった記録
学校での様子は、家庭だけでは見えにくい部分を知る手がかりになります。
こうした資料があると、医師が 「お子さんの普段の姿」をより立体的にイメージしやすくなり、話がスムーズに進みます。
本人への声かけは「安心」を優先
いきなり「病院に行くよ」と言われると、多くの中学生は身構えるかと思います。
おすすめの声かけは、
「最近しんどそうだから、もっと楽に過ごせる方法を一緒に探しに行こうと思ってるよ」
「治すためじゃなくて、困ってる理由を見つけに行く感じだよ」
など安心を優先する伝え方をぜひしてみてください。
札幌で診断を受けるときの「医療機関の選び方」

ここからは、実際に受診先を探すときのポイントをご紹介します。
医療機関は、時期によって受け入れ体制や対象年齢が変わることがあるため、
この記事では具体的な病院名ではなく、
「どんな病院を選べばいいか」「公式サイトのどこを見れば判断しやすいか」 を中心に、
実際に探すときに役立つ視点をまとめています。
① 小児精神科・児童思春期外来・発達外来の探し方
札幌で医療機関を探すときは、まず 「どんな診療科が中学生の発達に対応しているか」 を知っておくと、検索しやすくなります。
インターネットで検索するときは、次の言葉を組み合わせると見つけやすいです。
病院を探すときに使えるキーワード
インターネットで検索するときは、次の言葉を組み合わせると見つけやすいです。
「小児精神科 札幌」
「児童精神科 札幌」
「児童思春期外来 札幌」
「発達外来 札幌 中学生」
「思春期外来 札幌」
「発達障害 診断 札幌」
公式サイトでチェックしたいポイント
次のような文言が書かれている医療機関は、中学生の発達や思春期の診療に慣れている可能性があります。
「小児精神科」「児童精神科」「思春期外来」
「発達障害の診断・支援に対応」
「WISC・KABC などの心理検査に対応」
「心のケア(不安・抑うつ)にも対応」
「心理士によるカウンセリング」
「家族支援・ペアレントトレーニングにも対応」
こうした表記があると、発達特性+心の面の両方を丁寧に診てもらえることが多いです。
医療機関を選ぶときに見ると安心な点
これらは、診断の正確さや通院のしやすさに直結するため、事前に見ておくと安心です。
- 診ている年齢層(中学生対応か)
- 検査体制(WISCなど)
- 診断後のサポート(カウンセリングの有無・継続相談ができるか)
- 予約の待ち期間
- 通いやすさ(アクセス・家からの距離)
②思春期外来(心療内科・精神科)を選ぶときのポイント
思春期外来・こころの診療所は、不安、落ち込み、不登校、対人関係のストレスなど、思春期特有の心の問題に幅広く対応しています。
特に、
- 発達特性+心の負担
- 不登校が長期化
- 朝の不安・涙
- 人間関係による消耗
がある場合は、思春期外来が合うことがあります。
選び方の目安
公式サイトに、
- 「思春期の心の問題に対応」
- 「不安・抑うつ」
- 「認知行動療法」
- 「心理士によるカウンセリング」
- 「家族支援」
などの表記がある医療機関は、発達特性が原因の二次的な負担にも丁寧に対応してくれることが多いです。
診断の流れ・期間・費用
札幌市内の多くの医療機関で共通している流れをまとめました。
受診に関するステップ
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1初診予約(電話)
ほぼすべての医療機関で初診は電話予約です。
予約時には以下を聞かれやすいです。
- 年齢
- 主な困りごと
- 紹介状の有無
初診までの待ち期間は、数週間〜数か月のこともあります。
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2初診(問診・観察)
- 生育歴
- 学校での様子
- 困っている行動
- 本人の気持ち
を丁寧に聞き取り、必要に応じて心理検査を行なうことがあります。
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3心理検査(別日に実施)
医療機関によって内容は異なりますが、必要に応じて次のような検査を組み合わせて行うことがあります。
- WISC(ウェクスラー式の知能検査)
得意・苦手のバランスを見る代表的な検査です。 - KABC
認知のタイプや学習のつまずきを詳しく見ることができます。 - ADOS(自閉スペクトラム症の特徴を観察する検査)
※すべての医療機関にあるわけではありません。 - ADHD評価スケール
行動面の特徴を整理するために用いられることがあります。
心理検査は 「診断のためだけ」 ではなく、「お子さんがどんなサポートで楽になるか」を見立てる材料として用いられます。
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4結果説明(別日に実施)
検査後は、医師から次のような内容の説明があります。
- 診断の有無(診断名がつく場合・つかない場合)
- 特性の傾向(どんなところが得意か、苦手か)
- 学校でのサポートの受け方
- 家庭で気をつけると良い点
- 今後のフォローや通院の必要性
結果説明は、「評価される場」 ではなく、
「これからどう支えていくと楽になるか」を一緒に整理する時間 と考えていただけると安心です。
費用:何に何円かかる?
- 初診 3,000〜5,000円
- 心理検査 3,000〜8,000円
※中学生までは、札幌市の「子ども医療費助成制度」により、条件を満たせば保険診療の自己負担が軽減される場合があります。詳細は公式サイトをご確認ください。
初診時の持ち物:何を持っていくと良い?
初診で持っていくと良いものは
困りごとのメモ、学校のプリント・通知表、生育歴のメモがあると医師に相談内容が話しやすいですし、
本人が安心できる持ち物があるとリラックスして受診をすることができます。
診断名への不安とどう向き合うか
診断は、
- 受けてもよい
- 受けなくてもよい
- タイミングをずらしてもよい
どれも正しい選択です。
診断名に抵抗がある保護者はとても多いです。
ですが、診断名はお子さんを縛るものではありません。
大切なのは、お子さんがこれ以上つらくならないこと。保護者が一人で抱え込まないこと、です。
- 「診断名=その子」 ではない
診断名は、 生きづらさの理由を整理するための道具 にすぎません。
- 周囲に伝えるかどうかは「家庭が決めていい」
学校に伝えるか、親だけが知っておくか、選ぶのはご家庭です。 - 診断名は、本人のせいでも、親のせいでもない
中学生は「自分のせい」と受け止めやすい時期です。
診断名は責任を誰かに押しつけるためのものではなく、「どうして困るのか」を理解し、ラクに過ごすヒントを得るためのもの。
この記事が、迷いのなかにいる保護者の方の
「心の負担をほんの少し軽くする一助」 になれば嬉しく思います。
本記事に記載された内容は一般的な情報であり、個別の医学的判断・診断・治療を代替するものではありません。診断・治療方針につきましては、必ず医療機関へご相談ください。
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