発達障害

自立支援医療(精神通院医療)ー医療の継続の重要性と制度のルールを中心にー

(読了見込時間:約5〜10分)

はじめに:精神科への通院と服薬 / 関連する医療制度とは?

皆さん、こんにちは。

「札幌の「大人の発達障害」お助け窓口」をご覧いただきありがとうございます。

本サイト「札幌の「大人の発達障害」お助け窓口」では、札幌にお住まいの発達障害をお持ちの方へ向けた暮らしや日々の困りごとを解決するヒントをご紹介しております。

今回この記事では、発達障害をお持ちのかたにとって必要となる場面の多い

・精神科への通院と服薬について

・それに関連する医療制度(自立支援医療)について

以上2点にフォーカスした内容をお届けしようと思います。

日本では国民の全員が保険証を所持し、その時に必要に応じて病院・クリニックを選び、そこに通うことが当たり前になっています。

しかし、病院での治療や薬の処方は決して無償で行われるわけではありません。

そこには自身のお金の負担も生じているわけですが、それがいつも当たり前のこととしてできる保証って、果たしてあるのでしょうか。

「仕事を辞めてしまった」

「貯蓄もなくて病院に行きたくてもいけない」

「月の医療費が生活を圧迫しているけど、仕方がないのかも」

今回の記事の内容が、そんな方々のニーズにアプローチできるものであれば幸いです。

このページを読むことでわかること

  • 精神科に通院する意味・通院を継続することの必要性について知ることができる
  • 精神科を継続して通院しやすくなるための医療費制度である、自立支援医療(精神通院医療)についてその申請・更新方法を知ることができる

この記事の筆者について

筆者① ほそかわ

  • 札幌市内の障害福祉サービスを提供する事業所にて、生活支援員/精神保健福祉士として勤務しています
  • 勤務している事業所では日々、一般就労を目指す障害者のかたの就職活動のお手伝いや訓練の実施、個別対応を行っています
  • ちなみに趣味はエレキギター、歌、ファッション、カフェ巡りとやや多趣味です

筆者② こさか

  • 札幌市で障がいをお持ちの方の相談員をしております。
  • 主な業務は障害福祉サービスの調整(ヘルパー調整やグループホーム入居のお手伝い、病院や役所等への連絡)をしております。
  • 山登りやボルダリングが大好きです

以上2名で執筆しております。それでは参りましょう。

もくじ

(1)精神科の定期的な通院の必要性について

この記事を読んでいるかたの多くが精神科への通院、またはこれから精神科へ通院することを検討しているのではないでしょうか。

まず、精神障害や疾患は他の病気・疾患と比べて定期的な通院や治療が必要となってくることがほとんどです。

その理由を簡潔にお伝えするなら、そもそも精神障害や疾患には「完治」という概念が存在しないからです。

仮に風邪を引いたとしても、その症状にあった薬を飲んだり、ある程度の休養を取ることで個人差はあれど放置さえしなければどこかのタイミングで治りますよね。

精神系の障害や疾患も薬(以外、向精神薬とします)を飲むことで、

  • 気持ちの落ち込みを軽減する
  • 不安感が落ち着く
  • 幻覚や妄想の症状を抑えられる

といった効果はもちろんあります。

医師の指示に従い適切に服薬することで、その効果ももちろん高まります。

しかし、多くの向精神薬は即効性を持ち合わせていません

一定期間(1〜2週間など)飲み続けることで、個人差はあれど徐々に効果を発揮すると言われています。

だからこそ、精神障害・疾患においては長期的な治療と服薬があってはじめて意味をなすといっても過言ではないでしょう。

(2)「自立支援医療(精神通院医療)」〜通院を継続するために皆さんにできることは何か〜

精神障害・疾患の治療においては、定期的な通院と服薬が必要となってくることが少し見えてきたのではないでしょうか。

けれども、通院や服薬のための薬の処方にはもちろんお金がかかります

通院の頻度や薬の種類にもよりますが、人によっては月に¥5,000近く、またはそれ以上かかることもあります。

日々を安心して暮らしていくために必要な通院や薬だと思いますが、それが皆さんの家計・経済面を圧迫してしまっては元も子もありません

日々の暮らしと治療を安定的にしていくための方法、それが「自立支援医療(精神通院医療)」という制度の活用です。

自立支援医療(精神通院医療)とは

  • 国が実施する医療費制度のひとつ
  • 定期的に通院や治療が必要な方をターゲットとしている
  • 窓口で支払う医療費を3割負担から1割負担に減らすことができる

この制度を使用すると…

医療費が減額されることで、定期的な通院・治療・薬の処方を継続して受けやすくなる

更新は1年ごとに可能。

2年に1回は医療機関の診断書が必要になります

サービスを受ける際には、「この制度を使っている」という証明として受給者証を発行し病院や薬局に持参する必要があります(受給者証については、次の項目 (3)「自立支援医療(精神通院医療)」の申請方法とその継続についてで解説しています)。

仮に皆さんが離職してしまった時・一時的に収入源が滞った時も、この制度を活用すると低コストで(※)精神科医療のサービスを受けることが可能になります。

(※)この制度によって受けられる精神科医療のサービスの例

  • 精神科病院、診療所(クリニック)の診察やカウンセリング
  • 精神科からの薬の処方
  • 訪問看護サービスの利用
  • 精神科デイケアの利用

注意すべきポイント

ここまでの流れで、

「この制度を実際に使ってみたい」

「使うことを検討してみようかな」

そう思った方もいらっしゃるかもしれません。

そのような方へ向けて、以下2つの注意ポイントをお伝えします。

①申請開始時期は精神科通院を継続して半年が目安!!

自立支援医療のそもそもの目的は「継続的な通院と治療を行うこと」にあります。そのため、申請も精神科を受診してすぐ行えるわけではありません。

その精神科を初診してから6ヶ月を目安とし「定期的に通院(月1回の受診などを)している」という受診歴があって申請が可能になります。

もし初診からの6ヶ月間に転院するようなことがあった場合は?(例)Aクリニックに2ヶ月受診をしていたが、引っ越し等の関係でBクリニックへ転院しなければならなくなったその場合においてはAクリニックに通院していた2ヶ月も定期通院の期間として数えることができます

▶︎ただし定期通院の期間に数えるためにはAクリニックとBクリニックの医療機関同士の間でやり取りを行ってもらわねばならず、「自立支援医療の申請のために、前の医療機関への問い合わせが必要となる」旨を皆さん側で医療機関に対して申告を行ってもらう必要があります。

②すべての医療機関で自立支援医療が適応されるわけではない!!

このサービスを使う上での最大の注意ポイントと言っても過言ではないのが、使用できる医療機関には限りがあるということです。

その見分けかたは、その病院・クリニックが「指定自立支援医療機関」であるかどうかです。

つまり、都道府県の知事もしくは政令指定都市の市長が指定しているかどうかがカギになります。

→札幌市は政令指定都市に該当しているので、札幌市長が指定した医療機関がその対処になります

自身が通院を希望する指定自立支援医療機関であるかを知るためには、病院・クリニックのホームページを事前に確認するか、直接病院へ電話等で問い合わせを行うことをオススメします。

ポイント

医療サービスを受けるにあたって、私たちは

・普段払っている保険料

→企業に所属する人であれば健康保険として天引き

→どこかの企業・団体の健康保険に加入していない場合は国民健康保険

・事業主・国の出しているお金

によってその7割が負担され、

残りの3割を私たちが医療機関の窓口で負担することでそのサービスを受けることができています。

自立支援医療(精神通院医療)においては、この窓口で負担する金額を受給者証を持っていることで1割にすることができますが、この残りの2割は無いものとされているわけではなく私たち国民が支払っている保険料と国のお金の負担割合を増やすことで1割にできているのです

(3)「自立支援医療(精神通院医療)」:申請方法と継続するための手続きとは?

(1)(2)を経て、

「これから自身も自立支援医療を使いたい」

と感じたかたもいらっしゃるでしょう。

最後に、この制度の活用にあたって必要な手続きの方法をご紹介します。

まず、制度を受けるにあたっては受給者証が必須です。

新たに受給者証を発行および使い続けていくために行うことを、パターン別に以下に記載しました。

地域によって受給者証のかたちは異なりますが、この記事では札幌市でのお話に限定してお伝えします

新しく申請をする場合 

どこで申請するのか:まずは区役所の保健福祉課へ

申請を行うために、お住まいの地域の区役所へ行く必要があります。

区役所には様々な担当課がありますが、今回のような医療・福祉に関するケースは保健福祉課が担当しています

必要なもの

リストにまとめると、下記の通りです。

  • ①病院・クリニックにて発行された、この申請専用の診断書
  • ②保険証
  • ③申請書(区役所窓口側で用意あり)
  • ④本人確認が可能な書類(マイナンバーカードなど)
  • ⑤自身の収入がわかる書類

一つずつ解説していきます。

①病院・クリニックにて発行された、この申請専用の診断書

この診断書は、 

  • 皆さんがどんな障害や診断において治療をしているのか
  • その治療を行うにあたり、この制度の必要かどうかを判断する

ための大切な材料になります。

②保険証

皆さんが現在どこの保険を使っているのかを証明するものです

  • 会社員や団体に入っている、その家族の方であれば社会保険や共済保険
  • 個人事業主や離職中の方であれば国民健康保険

といったように、保険証に記載されている情報を申請時に参照するために使用します。

③申請書(これは区役所の窓口で用意してもらえます)

この申請書を記載し、皆さんがこれから

  • どこの病院を使うのか
  • どの薬局を使ってお薬を受け取るのか

などの申し出を行います

自立支援医療を使うにあたっては、皆さんが申請時に指定した医療機関や薬局等のみが対象になりますため、ここはとても大切な工程です。

④本人確認が可能な書類(マイナンバーカードなど)

マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付きの身分証明書の提示が求められます。

提示が難しい場合は、健康保険証にあわせて年金手帳などをプラスして提出することが必要になります。

⑤自身の収入がわかる書類

この制度は医療費の減額にあわせて、その月に支払う医療費の上限」を定めます。

その上限を定めるための基準となるのが、自身の世帯年収です。

そのために、新規で申請をする際は(※)ご自身の世帯年収を証明する書類(直近の給与明細や住民税非課税証明書など)が必要となります。

→上限額を決めるにあたり所得にあわせて住民税の有無・その程度を確認して判断されます

(例)仮に定められた上限額が「¥5,000」だったとします。

その場合、もし皆さんがその月の医療機関の窓口において支払う金額が「¥5,000」を超えた時点で自己で負担する金額は発生しなくなります。

(※)世帯年収を証明する書類とひと口にいってもあらゆるものが該当する場合があると思います。そのため、自身が持参しようとしているものが区役所の窓口の申請にて使用できるかどうかを一度問い合わせてから申請へいくことをおすすめします。

①〜⑤の書類の提出・記入の内容をもとに、

皆さんのお住まいを管轄する精神保健福祉センター(札幌市の場合は札幌こころのセンター)が申請内容を確認し、このサービスに該当するか否かの最終決定を行います。

無事に精神保健福祉センターでの審査を通過することができれば、2ヶ月前後で受給者証がご自宅に届きます。

制度を継続(更新)する場合

自立支援医療の期限は1、もし使用し続ける場合は2年に1回は医療機関が発行する専用の診断書の発行・提出が求められます。

更新のタイミングは有効期限の3ヶ月前から、新規で申請するのと同様に区役所の保健福祉課で行えます。

有効期限が切れる・必要なタイミングで診断書がなけれ再度新規での申請になるおそれがあるため、

・自身の受給者証の更新タイミング

・診断書の有無

についてはよく確認をした上で申請へ向かうと良いでしょう。

また場合によっては

・通院先の転院(病院の変更)

・使用する薬局の変更

など、自立支援医療を使用している途中で受給者証の記入と異なる医療機関や薬局の利用を検討、もしくは転居により変更せざるを得ない状況になる場合もあるかと思います。

その場合も同じく、保健福祉課へ行って変更したい内容を申し出てください。

申請をすることで、受給者証が新しい内容で再発行されます。

「引っ越したことにより住所が変わった」

「就職して国民健康保険から会社の社会保険に変わった」

「結婚等により氏名が変わった」

というケースにおいても同様です。

また変更内容が反映された受給者証が届くまでは、変更の申請をした際の書類を控えとして使用できる場合があります。

医療機関・薬局によっては使用できないケースもあるため絶対とは言えません

おまけ:精神障害者保健福祉手帳・障害福祉サービス利用とのつながり

ここからは余談になりますが、

(1)精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方

(2)これから障害福祉サービスを利用しようと検討されている方

以上の方に向けて、自立支援医療との関わりについてお伝えしたいと思います。

(1)精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方

先ほども述べたように、自立支援医療には1年に1回の更新と2年に1回の診断書の提出があります。

同じく精神障害者保健福祉手帳にも2年に1回の更新がありますが、こちらでも専用の診断書が必要になります。

もしこの2つをどちらも持っていたとき、

自立支援医療の有効期間が精神障害者保健福祉手帳の期限よりも長い場合において

2つの制度の有効期間を揃えることが可能になります。

(例)

  • 精神障害者保健福祉手帳の有効期間が2025年11月30日まで
  • 自立支援医療(精神通院医療)の有効期限が2026年3月31日まで

▶︎この場合は、自立支援医療の有効期間を精神障害者保健福祉手帳の有効期間に合わせる(すなわち、一時的に自立支援医療の有効期間を短くする)ことで、2つの制度の有効期間を揃えることができる

2つの制度の有効期間を揃えることで本来それぞれで診断書の発行が必要なところを、1枚の診断書の提出で更新を終えることが可能になります。

お仕事をされているかたや区役所への来所がなかなか難しいと感じる方も、少なからずいらっしゃるはずです。

この2つの制度において、

  • 有効期間を揃えることができ、移動や手続きのコストを減らせる
  • 診断書の発行も1度で終えられる

というのは、大きなメリットになり得るのではないでしょうか。

(2)これから障害福祉サービスを利用しようと検討されている方

障害福祉サービス(就労移行支援事業所などの利用)を受ける際は医師意見書と呼ばれる医師による医学的な見立てを記載した書類の提出が必要となり、

それをもとにサービスの妥当性が判断されます。

障害福祉サービスを利用するとなった際の判断には、2か月近い時間を要することもあります

その際に、もし自立支援医療(精神通院医療)や精神障害者保健福祉手帳があった場合には、その判断をスムーズに行える可能性があります

受けたいと思った障害福祉サービスを、少しでも早く受けるためのポイントとなることがあるのです。

おわりに

ここまで、

  • 精神科通院と服薬の重要性
  • 通院と服薬を続けていくための手段となる自立支援医療(精神通院医療)の取得方法
  • 自立支援医療の申請と更新(変更)の方法と注意点

を中心にまとめてきました。  

皆さんの知りたい情報は、この中にあったでしょうか。

精神科の通院を含めた医療サービスを受け続けていく必要性・安心してそのサービスを使う手段があることによって、

皆さんがどのような状態においても心身の安定を維持できる可能性が存在することを知ってもらえたら幸いです。

改めて、本サイト「札幌の「大人の発達障害」お助け窓口」では就職活動以外でも、発達障害に関連する困りごと、皆さんの助けとなれる情報を今後も掲載しております。

何か気になるトピックがありましたら、一緒にお読みいただけますと幸いです。

それでは、またどこかでお会いいたしましょう。

  • 職場の悩みや働きづらさには、具体的な「対処の考え方」があると安心できます。
  • 自分で少しずつ改善していきたい方のために、【問題解決力が身につくワークシート】と【セルフケアチェックシート】を無料でご用意しました。
  • 今すぐダウンロードする(PDF)

-発達障害