はじめに:中学生になってから「発達が気になる」と感じたときに知っておきたい基礎知識
中学生になったお子さんのことで、 「もしかして発達障害かもしれない…?」 そんな不安を抱えながら、毎日を過ごしていませんか?
小学生のときは気にならなかった行動や困りごとが、 中学生になってから急に目立ち始めるケースがとても多くあります。
この記事では、札幌で実際に相談できる場所や、発達障害の基礎知識を 福祉専門職の視点でわかりやすく解説します。
発達障害の特性に早めに気付けると、お子さんが学校生活で感じている負担や生きづらさを、少しでも軽くするためのヒントが見つかりやすくなります。
「早く対応しなければならない」という意味合いではなく、
気付いたタイミングからできることが増えていく、そんなイメージです。
札幌市には多くの相談窓口や支援機関があります。
まずは「どんな特徴があるのか」「どんなときに相談すればよいのか」を、少しずつ知っていけると安心につながると思います。
この記事の要点
- 中学生は発達特性が表面化しやすい時期
- 困りごとが継続して見られる場合は相談が有効
- 札幌市には「おがる」「教育相談センター」「学校内の支援」など複数の窓口
- 相談は特別なことではなく支援調整の第一歩
- 必要に応じて医療機関での診断も次のステップとして検討できる
中学生の発達が気になるときに見られるサインとは?
発達障害とは、脳の発達の特性によって、コミュニケーション・学習・行動の面に継続した困りごとが現れる状態をいいます。
一方で、中学生という時期は、どのお子さんにも「思春期ならではの変化」が表れやすい時期でもあります。
たとえば、
- イライラしやすくなる
- 友だちとの距離感が難しく感じる
- 集中が続かない
- 宿題に取りかかれない
- 親に反抗したくなる
こうしたことは、自然な成長の過程でもよく見られる姿です。
ただ、発達段階による一時的な変化と、発達障害による困りごとの違いには、
いくつかの「見分けるポイント」があります。
自然な発達段階の変化に多い特徴は、
- 時期が過ぎると落ち着くことが多い
- 先生や家族の声かけで改善しやすい
- 状況や日によってできる・できないの幅がある
- 本人に「なぜ困っているのか」を聞くと説明できることもある
対して、発達障害の特性が関係しているときの特徴は、
- 苦手さが長期間続く(数か月〜数年単位)
- 家や学校などどんな場面でも似た困りごとが出る
- 得意・不得意の差が大きく、“極端な苦手”がある
- 本人が「努力してるのにできない」と苦しんでいる
- 叱る・励ますだけでは改善しにくい など
つまり、【できる・できないの波がある】のか、【根っこの部分がずっと変わらない】のかが、ひとつの目安になります。
代表的な発達障害の特徴
発達障害にはASD(自閉スペクトラム症)/ADHD(注意欠如・多動症)/LD(学習障害) があり、
いずれも脳の特性によって「理解の仕方・集中の仕方・学び方」に違いがあるイメージです。
ASD(自閉スペクトラム症)に多い中学生のサイン
- 暗黙のルールや「空気」が読み取りにくい
- 友人関係のトラブルが増える(距離の取り方が難しい)
- 興味・こだわりが強く、切り替えが苦手
- 団体行動や曖昧な指示が苦しい
- 本人は「なぜうまくいかないのか」が分からず混乱しやすい
ADHD(注意欠如・多動症)に多い中学生のサイン
- 忘れ物・提出物の抜けが続く
- 授業中の集中が途切れやすい
- 宿題・課題の「手をつけるまで」が非常に苦しい
- 衝動的に発言・行動してしまう
- 片付け・時間管理が極端に難しい
LD(学習障害)に多いサイン
知的発達には問題がないのに、次のように「特定の教科だけ極端に難しい」ことが特徴です。
- 文章の読み書きが苦手(ディスレクシアなど)
- 漢字が覚えられない、書けない
- 計算が極端に苦手、数字が混乱しやすい
- 繰り返し練習しても身につかない
「努力しているのにできない」状態が続く場合は、特性が関係している可能性が高い と考えられます。
なぜ中学生の時期に、特性が目立つようになるの?
①「教科担任制」で求められる力が急に増える
小学校では1人の担任の先生が全教科を教えるため、声かけ、予定の管理、忘れ物のフォロー、プリントの整理などをある程度カバーしてくれます。
しかし、中学生になると状況が一変します。
1日に複数の教科と先生と関わる、教室移動の増加、時間割が複雑になる、プリント・宿題・提出物の管理量が増えるなど、「自己管理能力のハードル」が一気に上がります。
ASD・ADHD・LDなどの特性があると、指示の理解・優先順位づけ・持ち物管理・切り替えに負荷がかかり、困りごとが増えやすくなります。
②授業内容が難しくなり、抽象的な理解が求められる
中学校の学習は、小学校より抽象度が高くなります。
例えば、国語だと国語心情理解、比喩、要約、数学だと文字式、関数、理科だと目に見えない概念(化学・物理)などを学ぶようになります。
ASDの子は「曖昧な表現」や「抽象的な読み取り」が苦手なことが多く、
LD(学習障害)の子は読み書き計算の負担が増えることで困り感が強まります。
そのため、「急に成績が下がった」「がんばっているのに理解できない」という状況が起こりやすくなります。
③思春期特有の心身の変化が重なる
中学生は、ホルモンバランスの変化により情緒が不安定になります。
イライラしやすい、不安が強まりやすい、夜眠れない、人間関係への敏感さが増すなど、発達特性のある子は、刺激に敏感な場合が多いため、この影響をより強く受けることがあります。
結果として、「不登校」「朝の不安」「情緒の乱れ」が増えやすいのもこの時期です。
④友人関係が一気に複雑になる
中学生になると、コミュニケーションのルールが「大人に近い形」になります。
空気を読む文化、LINEやSNSの微妙な温度感、グループの力関係、冗談・皮肉の理解、距離感の調整など。
ASD傾向のある子は、この「暗黙のルール」を理解しづらく、トラブルや誤解、孤立を招きやすくなります。
ADHDの子は、衝動性から不用意な発言をしてしまい、トラブルに巻き込まれるケースもあります
💡ポイント整理:中学生は「特性が表面化しやすい」時期
ここまでの理由が重なることで、中学生は
- 困りごとが増えやすい
- 特性が目立ちやすい
- 保護者が「急に変わった」と感じやすい
という時期になります。
これは「本人の努力不足」ではなく、環境の変化+思春期+発達特性の重なりによるもの。
だからこそ、早めに相談することで、負担を減らし、学校生活を大きく改善できるタイミングでもあります。
どんなときに相談すべき?相談を考えるタイミングの目安
次のような状態が「継続して」見られる場合、専門家への相談を検討してみてみましょう。
- 学校生活への影響
授業内容についていけず、本人も苦しんでいる
提出物の遅れ・忘れ物が習慣化している
- 友人関係・対人面のトラブル
トラブルが繰り返し起こる
話の意図が伝わらない/読み取れないことで摩擦が増える
いじめ・孤立・グループ不適応が見られる
- 登校状況の変化
不登校・保健室登校が続いている
朝になると強い拒否・腹痛・不安が出る
休日は元気でも、学校が近づくと状態が悪化する
- 家庭での困りごと
親子喧嘩が増え、関係が悪化している
夜更かし・過集中・生活リズムが崩れやすい
宿題に何時間もかかり、毎日が「戦い」になっている
- 本人の心のサイン
「頑張ってるのにできない」と涙を見せる
自己否定が強い
不安・イライラ・抑うつ状態が続いている
叱っても改善しない、本人が努力しても変わらない行動は、特性による可能性も考えられます。
発達特性は「ラベルをつけること」ではなく、お子さんの苦しさの原因を整理することです。
中学生で気づけるのは、とても大きなチャンスです。
早期に相談することで、お子さんが「苦手のせいで傷つく時間」を減らすことができます。
中学生になってから「発達が気になる」と感じたときに相談できる場所

札幌市には、中学生の発達障害に関する相談を受け付けている公的機関が複数あります。
まずはこれらの相談窓口を利用することで、お子さんの状況に合った支援の方向性を見つけることができます。
①札幌市自閉症・発達障がい支援センター おがる
札幌市の発達障害支援の中心機関で、診断の有無に関わらず無料で利用できる相談窓口です。
専門相談員が、
- 発達特性の理解
- 学校・友人関係の困りごと
- 家庭での関わり方
- 医療機関や福祉サービスの紹介
などをサポートします。
保護者向け講座や交流会もあり、同じ悩みを持つ家庭とつながれる点も特徴です。
「まずどこに相談したらいいかわからない」という時に、最初に利用しやすい窓口です。
②教育相談センター・ちえりあ教育相談の活用方法
札幌市教育委員会が運営する、公教育の立場から相談できる窓口です。
学習のつまずき、発達特性、不登校、友人関係など学校生活に関する幅広い悩みに対応します。
- 専門員・臨床心理士による相談
- 学習支援方法の提案
- 教師や学校との連携調整
など、教育の観点から具体的なアドバイスが得られます。
「診断はないけれど学校生活に困りがある」「グレーゾーンかもしれない」というお子さんに特に適しています。
③学校内の支援(スクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーター)
中学校にも発達に不安のある生徒を支援する仕組みがあります。
スクールカウンセラーは心理の専門家で、
- 友人関係
- 不安や情緒面
- 学習意欲の低下
など、心理面の相談に対応します。
特別支援教育コーディネーターは学校の教員で、
- 支援計画の作成
- 担任との連携
- 外部機関の紹介
- 授業中の配慮の調整
など、学校全体での支援体制を整える役割があります。
学校は「毎日通う場」なので、日常的な困りごとに最も迅速に対応できる窓口です。
相談することは「悪いこと」ではありません
中学生の時期は、環境の変化と思春期の影響が重なり、これまで気づかなかった困りごとが表に出やすい時期です。
保護者としては心配になりますが、発達特性に気づくことは、決して悪いことではありません。
むしろ、「お子さんが抱えている生きづらさの理由が分かる」「学校生活が楽になる方法を一緒に見つけられる」という大切な第一歩です。
相談することは、「問題がある」からではなく、
お子さんがこれ以上苦しまないように、環境やサポートを整えるための前向きな選択なのです。
次のステップ:診断について
ここまでの記事では、「困りごとが見え始めたときに知っておきたい基礎知識」と「札幌で利用できる相談窓口」についてお伝えしてきました。
まずは「相談できる場所」が分かるだけでも、少し気持ちが落ち着いたり、「一人で抱えていたわけではないんだ」と思っていただけていたら嬉しく思います。
ただ、実際に現場で支援をしていると、多くの保護者の方が次に必ず悩まれるポイントがあります。
それが医療機関での「診断」についてです。
「今、受診するべき?」「様子を見てもいいのかな?」
この迷いは本当に多くの保護者が感じているもので、決して特別な悩みではありません。
行動の困りごとが増えてきたとき、学校でのトラブルが続いたとき、不登校が長引いてきたとき、
あるいは朝になると腹痛や不安が出てくるようになったとき。
こうした場面で、
「受診するタイミングをどう考えればいいの?」「病院に行くのはまだ早い気がする…」
と立ち止まるお気持ちは、とても自然なことです。
「診断って実際には何をするの?」「検査にどれくらい時間がかかるの?」「診断名がつくことに抵抗がある」「学校や周りの人にどう伝えればいいの?」
といった、診断そのものに対する不安や疑問は、どのご家庭でも一度は抱くものです。
診断にはメリットだけではなく、不安を感じる部分があるのも自然なことです。
その受け止め方は、どのご家庭にもそれぞれ事情やお気持ちがあります。
ですので、「診断は受けるべき/受けないべき」と、はっきり決められるものではありません。
大事なことは、お子さんのペースや保護者の保護者の方の想いを大切にしながら、
そのご家庭にとって無理のない形で、次のステップを一緒に考えていくことだと感じています。
次回は、診断に対する不安を少しでもやわらげられるように、
- 医療機関に行くタイミングの目安
- 診断までの流れ
- 実際の検査内容
- 診断があることで受けられるサポート
- 診断名との向き合い方
など、保護者の方からよくいただく質問にひとつずつ丁寧にお答えしていきます。
診断は「特別なこと」でも「重い決断」でもなく、
お子さんが少しでも楽に、心地よく学校生活を送るための選択肢のひとつです。
また、本サイト「札幌の「大人の発達障害」お助け窓口」では、発達障害に関連する困りごと、皆さんの助けとなれる情報を今後も掲載していきます。
何か気になるトピックがありましたら、一緒にお読みいただけますと幸いです。
